当院では犬の婦人科の強化に取り組んでいます。犬の婦人科という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。主に卵巣、子宮、乳腺など生殖器に関わる病気を扱います。病名としては乳腺腫瘍、卵巣嚢腫、子宮内膜炎、子宮蓄膿症などがあげられます。これらの病気は若いうちに避妊手術をすることで予防することができます。今当院では乳がん検診に取り組んでデータを集めていますが、若いうちに避妊手術をしている子はほとんどしこりが見つからず、避妊手術をしていない子でしこりが見つかります。
卵巣、子宮の病気は避妊手術をすることで100%予防できます。乳腺腫瘍は1回目の生理が来る前に手術をすれば99%、2回目の生理が来る前に手術をすると95%防げると言われています。それ以降は生理が来るごとに予防率がどんどん下がっていきます。生理を何度か迎えさせてから避妊手術をした方がいいという人がいますが、あまりメリットはありません。繁殖させる予定がなければ早めに手術をした方がいいと思います。当院では5ヶ月以降で避妊手術をお勧めしています。
犬の婦人科に取り組もうと考えたわけは二つあります。 一つはしらさぎ動物病院の前身が産婦人科であったことです。院長の祖母である常安田鶴子がこの場所で産婦人科を開業していました。今から60年以上前のことです。
もう一つは予防できるはずの病気で苦しんだり命を落とす子を多く見てきたことです。例えば犬の乳腺腫瘍は半分の確率で悪性です。手術で摘出して取り切れれば完治することもありますが、肺転移が見つかるとどうすることもできず、徐々に弱ったり呼吸が苦しくなって死に至ります。子宮蓄膿症も避妊手術をしていない高齢犬ではしばしば発生します。これは早めに発見して手術で子宮と卵巣を取り除くことができれば完治しますが、手遅れだと腹膜炎や腎不全を起こして死に至ります。
他所の病院で高齢を理由に手術を断られた子が転院してくることがあります。手術をしなければ先は見えているので、飼い主様が希望すれば当院では手術をします。一か八か手術をして治った子は何頭もいますが、本当に大変になるので、できればそうなる前に避妊手術を受けてほしいのです。
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